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神様の企画

ブルブルブルブル、ガクガクガクガク。
 そんな中、一人の勇気ある者がいました。そう、あのどろぼう顔のシーズー犬ちゃん!
 ヘビさんたちに向かってキバを剥き出し、ドスの効いた唸り声で威嚇しながら、ジリッ、ジリッと近付いて行く。
 ヘビさんたちも負けてはいない。長い舌を出し「シャー、シャー」と、さらに大きく口を開けた。
「このままじゃ、どろぼう顔のシーズー犬ちゃんは飲み込まれちゃうよ、お母ちゃんなんとかしてぇー」
「な、なんとかったってぇー! お母ちゃん普通のヘビは平気だけど、あんな5メートルもあるヘビは見たこともないもん、怖いもん、やだもん」
「もうー、もん、もん、ばかり言ってないで、いつも女は度胸って言ってるでしょ!」
 とその時、大きいヘビさんの方が、おばあちゃんを目掛けて飛びかかった。
「キャー」
 全員の悲鳴。

 一瞬閉じてしまった目を開くと、なんと大きいヘビさんの首に、どろぼう顔のシーズー犬ちゃんがぶら下がっている。
「何? やられてるの? やっつけてるの? どっち?」
 ヘビさんにブンブン振り回されても、どろぼう顔のシーズー犬ちゃんは、噛み付いたまま離れなかった。
 やがて、どれだけ時間がたったのか、ヘビさんは疲れて、地面にベタッと頭をつけた。同時に、どろぼう顔のシーズー犬ちゃんが口を放すと、その一瞬の隙にヘビさんたちは、岩陰へと逃げて行った……。

 みんなでホッとした顔をしていると、どろぼう顔のシーズー犬ちゃんは、腰を抜かして震えているおばあちゃんの傍に近付き、顔をペロペロ舐めだした。
「あー、ありがとう。貴方のお陰で命拾いしたわー、本当にありがとう」
 おばあちゃんはそう言うと、シーズー犬ちゃんの頭を優しく撫で始めた。そして、お母ちゃんに向かい、
「このわんちゃんは、どちら様の子ですか?」
 と聞いてきた。
 お母ちゃんが、この子はいつの間にかホテルの駐車場にいた子で、市役所に尋ねても迷子の届けはないし、首輪もしていないので、身体の汚れからすると捨て犬かもしれないと説明すると、おばあちゃんは、
「お願いがあります。この子をぜひ、引き取らせてくれませんか?」
 と頼んできた。

「え~え~、そのためのわんこですから」
 ようやく頭が働き始めたお母ちゃんは、おばあちゃんには意味不明な返事をしてしまった。
「えっ?」
 不思議そうな顔をするおばあちゃんに、
「アッ、いいえ、なんでもないです。おばあちゃんに育ててもらえば、この子はきっと幸せになれると思います。じつは、こちらも本当のことを申しまして、これ以上わんこを増やすことが出来なくて、悩んでいたところです。なんせ7頭もいるんですから」
 と、お母ちゃんは日頃の疲れを、わざとらしく(?)顔に出して言う。
「そうですか、ありがとうございます。大切に育てさせていただきます。良かった、本当に良かった。私はヘビが大嫌いで、どんな小さいヘビでもダメなんですよ。毎年この時期になると、恐ろしくて庭に出ることも出来なかったんです。でも、今日はなぜだか外に出たくなってしまって、そのせいで……。でも、この子がいれば、これからは安心して庭いじりができます」
 おばあちゃんはニコニコと、とても嬉しそう。どろぼう顔のシーズー犬ちゃんはその間にも、ちゃっかりとおばあちゃんの膝の上に乗り、何事もなかったような顔をして甘えていた。

「それじゃ、そろそろ帰りますので」
 お母ちゃんは、どろぼう顔のシーズー犬ちゃんの頭を撫でながら、
「良かったね、今日から貴方は、ここの子だからね。お役目しっかり果たすのよ。じゃ、おばあちゃんお邪魔しました」
 と言い、帰ろうとした。
「あのー、この首輪とリードは?」
 おばあちゃんが聞いてきた。
「あー、いいですよ、うちのコロちゃんのお古ですけど、遠慮なくお使いください」
 と、太っ腹な返事をするお母ちゃん。
 ……しかし、おばあちゃんは心の中で、「こんな汚いのはいらないわ」って思っているに違いない……。

 まっ、何はともあれ、ゆうれい犬さんにお願いされた、おばあちゃんとわんこの出逢いがいつの間にか成功したんだから、良かったと言えるだろう。
 でも、神様も面白い企画を立てたもんだ。こんな方法で二人を逢わせるなんて……。

 それから何日かたって、あの大蛇のことは、近所でも有名な話になった。お散歩に行くと、
「奥さんも見たんですって? 10メートルもある大蛇を!」
 と、いつの間にか実物の2倍の大きさになっている。
「奥さん、あのお屋敷には、大蛇が何十匹もいるんですって!」
 と、お屋敷をまるでヘビ屋敷のように言う人もいる。
「あのお屋敷にはすごく強い番犬がいて、ヘビのような顔をしたどろぼうに噛み付いて、みごと捕まえたそうよぉー」
 と、混ぜこぜのメチャクチャな話をしている人もいた。
 こんないろいろな噂話に、「あったく!」と怒りながらもお母ちゃんは、適当に合わせながらその時の様子を再現してみせている。
 結構楽しんでるじゃん。お母ちゃんも噂話好きなんじゃないの!
 ほかにも、「あそこのホテルに行くと、わんちゃんをくれるそうよ」なんていう噂話にもなりました……。

 ※本当に、数人の方が訪ねて来たことがあります……母より

 ともあれ、どろぼう顔のシーズー犬ちゃんは、お相撲好きのおばあちゃんに、貴乃花から1字とって貴(タカ)くんと名付けられた。今では、朝は一緒に起きて、ご飯を食べて草むしりの手伝い? をしながら庭で飛び回り、ねぶた祭りをしてからテレビを見て、夕食をとってから少しじゃれ合う、という毎日のスケジュールを、楽しくこなしているようだった。

 セミの声も徐々に少なくなり、そろそろ美しい音色を奏でる秋の虫さんたちにバトンタッチする時季になってきた頃、ご近所にお刺身をおすそわけすることになりました。
 順番に配り、最後があのおばあちゃんのお屋敷。
「さっ、ポーちゃん急がないと。おばあちゃんの家、夕ご飯の時間が早いから」
 と、お母ちゃんは盛り付けられたお刺身が崩れないよう、慎重に運んで行った。
「こんなに飾りつけなくてもいいのに」
 と、姿造りの魚の頭を指で押さえながら、ブツブツ文句を言っている。
「こんばんわぁー」
 ドでかい声を出しながら、お屋敷の玄関チャイムを押している。ピンポーンがなんのためにあるか、わかっていないのかな?

 しばくしてドアが開き、おばあちゃんとどろぼう……あっ、違った貴くんが顔を出した。
「貴ちゃん、こんばんは」
 と愛想良くお母ちゃんが話しかけたのに、貴くんはプイッと横を向いてしまう。
 何! お母ちゃんにお世話になったこと、忘れちゃったの?
 おばあちゃんは、
「ごめんなさい、最近、愛想がなくて……。最初のうちは誰にでもしっぽ振って行ったのに、もうこの頃は私にベッタリで、他の人には全然行かないの」
 と、困った顔をしている。
 よほどおばあちゃんとの暮らしが楽しいのか、もしかすると、またどこかに連れて行かれるのではないかと、不安なのかも……。
 きっと、捨てられていた時に嫌な思いをいっぱいしたから、おばあちゃんから離れたくないんだね。私もそうだったから、よくわかるよ。

 お母ちゃんは、お刺身を、
「美味しいですから、食べてください」
 と渡し、
「貴ちゃん、バイバイ」
 と手を振って玄関から出た。じつは、お母ちゃんはお刺身が苦手で食べられない人なのに……。

「良かったね、貴ちゃんもおばあちゃんも幸せそうで」
 と、お母ちゃんと私が喜びながら、お庭の石畳を歩いていると、
「ギョッ!!」
 あの時と同じ2匹のヘビさんが、こっちを向いてトグロを巻いている。
 動けなくなったお母ちゃんと私がボォーッと見ていると……なんと、大きなヘビは人間のおじいちゃんの姿に、小さいヘビは、あのゆうれい犬さんの姿に変わっていった。
「うっそぉー、じゃーあの時のヘビさんは、おじいちゃんとゆうれい犬さんだったの?」
 お母ちゃんと私は、顔を見合わせて驚いた。
 二人はすぐにヘビの姿に戻って、ゆっくりうなずきながら、
「ありがとう」
 とだけ言い残して、お空へ消えていった。
「そうかぁー、おばあちゃんと貴ちゃんを出逢わせるために、わざとおばあちゃんの大嫌いなヘビになって、自分の首をあの子に噛ませたんだ」
 お母ちゃんと私の胸はジィーンと熱くなって、おじいちゃんとゆうれい犬さんの優しさを、あらためて感じ取っていた。

 しばらくの間、お母ちゃんと私は、ただその場に立っていた。
 そのうちお母ちゃんが、
「さー、ポーちゃん、私たちも、ロクちゃんやクロちゃんが待っているからホテルに帰ろう」
 と声を出し、二人で元気よく歩き始めた。
「エイ、エイ、オー、私たちは幸せだー」
 と、近所の迷惑も考えず大声を出すお母ちゃん。
 大きな木のてっぺんあたりでは、「あんたうるさいよー」と、いつも「うるさい、うるさい」って言われて続けている、遅鳴きのセミさんが怒っていた。
「ごめんね、セミさん」
 ミィーン、ミンミン、ミンミィーン。
 ミィーン、ミンミン、ミンミィーン。

 カナ、カナ、カナ、カナ、カナ、カナ、カナ、カナ。
 チンチロリン、チンチロリン。
 いつの間にか秋の虫さんたちが、「セミさんからバトンタッチして、これから音楽を担当しますのでよろしく」と、鳴き始めました。
 そんな、ひと夏のゆうれい犬騒動のお話でした。
 神様に守られた生き物たちは、いつも、何かのメッセージを伝えようとしているかもしれません。みなさまも、お気をつけあそばせ。


第2部「ゆうれい犬さんのお願い」のご愛読ありがとうございました。第3部をお楽しみに!!
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どろぼう犬さんがやってきた

朝5時30分という、早すぎる時刻……。この時間はお母ちゃんも私たちも、もちろん夢の中。私たち家族(お父ちゃんとおばあちゃんは別にして)はお寝坊さんだから、火事になっても地震がきても、絶対に起きない時間なのです。
 ところが、この日のお母ちゃんは飛び起きました。早起きのおばあちゃんが、
「駐車場にちっちゃなわんちゃんがいて、車に轢かれそうだよ」
 と駆け込んで来たからです。うちの駐車場はバス道路に面していて、とても危険なのです。

 おばあちゃんの話では、ゴールデンちゃんとお散歩をしていた近所のお姉さんが、うちの駐車場にわんちゃんの姿を見つけて、「ここのお客様のわんちゃんでは?」と報せてくれたそうです。
「とりあえず、見に行こう」
 お母ちゃんは私を抱っこして駐車場へ急ぎながら、
「迷い犬かなぁー、捨てられたのかなぁー。宗男くんみたく凶暴じゃなければいいけどねー」
 と心配している。
 宗男くんを保護した時、ホテルのスタッフは何回も噛みつかれたし、ここに来て1年以上たつのにまだ、機嫌が悪いと前触れもなくガブッてくるんです。

 駐車場に着き、ひと回りぐるぅーっと見渡したが、わんこの姿は見えない。
「太郎ちゃーん、チビちゃーん、ラッキーちゃーん、ハッピーちゃーん」
 いろんな名前で呼んでみても、姿を現さない。
 しばらくしてお母ちゃんが膝をついて、停めてある車の下を覗くと、いきなり、
「ゲェッ」
 と妙な声を出した。なんと、目の前にいきなりわんこの顔……それが、しかも……。
 ギョロりとした大きすぎる目、下あごが出てて、口の周りには黒い輪模様がぐるり……いわゆる、どろぼうさん顔なのです。お世辞でも「かわい~い」とは言えないシーズー犬。しかも、シーズー犬にしてはかなりでかい!! 男の子のようだ。

「まさか? これが例の!!」
 お母ちゃんと私は、顔を見合わせた。
「この子が、ゆうれい犬さんが話していた子? 今日がちょうど1週間後だけど……」
「そうみたいだね、お母ちゃん。でも、ゆうれい犬さんは、大人しくて可愛い子って言ってなかったっけ?」
「うん、まあ、確かに大人しいかもしれないけど……。この子が、おばあちゃんを幸せにしてくれる子なのかしら?」
「もしそうだとしたら、どうするぅー? どうやっておばあちゃんに逢わせようか? この子で大丈夫なのかなぁー」
 なんで二人で悩んでいるか、皆様もおわかりだと思いますが、正直なところ、こんなにも毛模様が汚いわんこは、とても珍しいと思います。

「とにかくポーちゃん、ここで考えていたってしようがないから、お部屋に戻ろう。わんこもついておいで」
 とお母ちゃんが言うと、シーズー犬ちゃんは、シッポを振りながら嬉しそうについてくる。
 途中でピタッと止まるので、お母ちゃんが、
「どうしたの?」
 と聞くと、ずーずーしくも「ダッコ、ダッコ」のポーズ。
「ウー、ワンワンワンワン(こらぁー、私のお母ちゃんに甘えるなぁー)」
 と威嚇しても、平気な顔でダッコを要求してくる。私の威嚇に動じないなんて、この子、意外と大物かも? 連れて行ったら、妹たちはどんな顔をするだろう。きっと驚くだろうなぁー。

 ところが、ホテルの中までツカ、ツカ、ツカとずうずうしく入って来たこのシーズー犬ちゃんに、妹たちはワンもなければキャンもない。少しだけクンクンしたが、興味がないのかしらんぷりしている。
 シーズー犬ちゃんも、妹たち用のご飯を食べ、お水を飲んでオシッコシートの上にお宝(ウンチのことです)をして、お部屋の一等席にゴロンと横になったと思えば、すぐにイビキをかいて寝てしまった。
「やっ、やっぱり大物だ!!」

 さて、私たち二人は、このわんこについてミーティングを始めた。
「それにしても、あのゆうれい犬さんは無責任だよ。おばあちゃんに逢わせるったって、いきなり連れて行ってどうぞとはいかないし」
「もうチョット可愛ければねー」
「そうだ! おばあちゃんの家に、黙って置いてきちゃおうか」
「お母ちゃん、それはまずいと思うよ」
「そうだねぇ」
「こんなのはどうかな? おめでとうございます、このわんこは貴方が当選しましたって、リボンでも着けて連れて行く」
「う~ん、それも成功しそうもないね」
「じゃあ、どうすんの」
「どうしようか」

 ペチャクチャ、ペチャクチャ、ペチャ……。
(よる――)
 コケコッコォー。
(あさ――)

 いいアイデアも浮かばないまま、結局、ゆうれい犬さんとの約束の日にはこれ以上何も起こらず、あっという間に翌日になってしまいました。
 お客様の朝食が済み、コーヒータイム、お見送り、妹たちのお庭へGO、お昼ご飯そしてねぶた祭りと、毎度のワンパターンを過ごしているうちにもう夕方。
「ワンワンワンワン、ワンワン、ワンワン」
 シーズー犬ちゃんがリードを咥えて、散歩に連れて行けと、お母ちゃんに怒っている。
「貴方は夕方になると、お散歩に行く癖が付いているのね。仕方ない、ポーちゃん一緒に行こうか。チコちゃんはあとでね、お母ちゃん、みんないっぺんには連れて行けないから」
 と言って、シーズー犬ちゃんに、ミックスのコロちゃん用の首輪とリードを着けた。妹のシーズー犬、ロンちゃんの首輪では、首に半分も回らないのだ。

 外に出ると、シーズー犬ちゃんは表情はどろぼう顔のまま、楽しそうにあっちクンクン、こっちクンクンしながら歩いていく。
 途中で、男前のゴールデン茶々丸くんや、ちっちゃくて可愛いマルチーズのチーズちゃん、そして毛の長~い美人シーズーのクッキーちゃんと逢い挨拶をしたが、誰もどろぼう顔のシーズー犬ちゃんには興味を示してくれなかった。 ツンケンされるのには慣れているのか、どろぼう顔のシーズー犬ちゃんも、自分から特に仲良しさんになろうともしないで、草の葉相手に独り遊びをしていた。
 とその時。

「キャー、助けてぇー」
 近くのお屋敷から、すさまじい叫び声が聞こえた。
 駆けつけるとお屋敷の庭では、なんと今回の作戦の標的(?)のおばあちゃんが、腰を抜かしてブルブル震えていた。
「どうしたんですか?」
 とお母ちゃんが聞くと、
「あ、あ、あそこ、岩の所、あそこに」
 と指をさす。
 そこにはなんと、5メートルはありそうなびっくりするほど大きなヘビと、それより少し小さなヘビが2匹、岩の上で頭をもたげながら、こちらを睨んでいた。
「こ、こ、怖い!!」
 一緒に駆け付けたゴールデンの茶々丸くんも、マルチーズのチーズちゃんも、シーズーのクッキーちゃんも、それぞれのお母ちゃんもそして私たちも、身体が固まって動くことが出来ない。
 ヘビさんたちは、少しずつこちらに移動してくる。
「お願いだから、こっちに来ないで!」
 人間の額からは冷や汗が、わんこの口からは冷やよだれが……。

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約束破り

お母ちゃんと二人で駆けつけると、妹たちがこの間と同じ部屋の前で唸っていた。
 相変わらず怖がりのクロちゃんは、まるでマッサージ機のように、グイングインと身体を揺すっている。
 おとなしいチコちゃんは、ドアの隙間からお鼻を「ヒクヒクヒク」。
 いつもとぼけているロクちゃんはお庭へ回り、なんでも興味のあるコロちゃんは、ドアを「ガリガリガリ」。
「こらぁー、ドアがキズだらけになっちゃうでしょ!! あったくぅ~」
 お母ちゃんが、目くじらを立てて怒る。
 ところがコロちゃんが、このおっかないお母ちゃんに怒られても、「ウ~、ワンワンワンワン、ウ~、ウ~、ワンワンワンワン(ここに怪しいやつがいる、ポーちゃん危険だからあっちに行ってて)」とドアに突進!

 そのとたん、「ドタドタドォーン」。
 なんと、お母ちゃんが同時にドアを開けてしまったから、さぁー大変。コロちゃんは思いっきり部屋の中へ突っ込んでしまい、くるくる回転してから、何かの上に尻もちをついた。
「あら大変、だ、だ、大丈夫? つぶされなかった?」
 なんとコロちゃんのお尻の下に、ゆうれい犬さんが敷かれていた。しかも、顔を真っ赤にして照れている。
「何ニヤニヤしてんのよ!! ゆうれいのくせに」
「あっ、いや、その~、すみません」
 ショボン。
 まっ、ゆうれい犬さんも男の子だから仕方ないか。年頃の女の子のお尻に敷かれて、周りから見つめられているんだから。

「ところで、コロちゃんたちにも、このゆうれい犬さんが見えるの?」
 妹4人は、「うん、見えるよ、はっきりと。カッコイイわんこだよねー」、「耳の形といい、鼻筋の通りといい、キリッとした目といい、私たちの理想のオス犬だよね~」などと、目を輝かせて言う。
「あのー、私チコちゃん。3歳。趣味はボール遊びとお唄、貴方は?」と、さっそく自分をアピールしている。
 仕方ない。妹たちは女盛り。今までオス犬とはあまり縁がなかったから、人間で言えばキムタクのようなカッコイイマスクに、ドキッとしてしまったのだ。

 ふと見ると、床の間の上に、行方不明だったパグの小次郎ちゃんが、チョコンと座っていた。いつの間にこの部屋に入ったんだろう?
「小次郎ちゃん、ここに来てたんだ。みんな心配して探してるよ。さっ、早くママの所に行こうよ」
 と私が声をかけると、ゆうれい犬さんが、
「ごめんごめん、僕がここにいたら、お泊りしてたわんちゃんが、みんな遊びに来てくれたんだ。それで昔話をしていたらよほど面白かったのか、この子だけもっと聞きたいって帰らなくて、そのうちドアが風で閉まっちゃって」
 と、済まなそうに謝った。
「じゃあー、みんなここに来たってこと?」
「そう、昨日お泊りした子は、みんな僕のことに気がついたらしく、最初は警戒してたけど、すっかり仲良しさんになっちゃって。死んだあとはどうなるの? とか、ゆうれいになってもパパとママに逢うことが出来るの? とか、質問責めにあっちゃったよ」
 ゆうれう犬さんも、嬉しそうに話をしている。

 そうして、パグの小次郎ちゃんは、無事にパパとママの元に戻りました。妹たちもお母ちゃんに連れられて渋々帰り、私も、
「それじゃ、またあとでね」
 と、一度お部屋に戻ることにした。
 それにしても、あのゆうれい犬さんは、いつからいたんだろう? 時々お客様のわんちゃんが、あのお部屋に行って独りで楽しそうに遊んでいたって話を聞いたことがあるけど、ずっと前からあのゆうれい犬さんがいたのだろうか? それとも、他のゆうれい犬さんだったのかなぁ? でも、どうして今まであのゆうれい犬さんの存在に、誰も気が付かなかったんだろう?
 ……不思議でしかたなかった。

 そして、今日もまたお母ちゃんの「お庭へGO」の合図で始まる、運動の時間がきた。みんなの飛び出す勢いで玄関マットがめくれ、「もっと静かに走んなさぁ~い」と、毎度ワンパターンのお母ちゃんの声。妹たちは階段を駆け下り、テニスコートを横切り、芝生の庭へ一目散。
 と、そこでみんなゆうれい犬さんが気になるのか、あのお部屋の前で止まり、お庭から覗き始めた。
 ところが、この時間はネコのみぁ~くんもお散歩の時間。のっそりのっそりプールサイドを通り、トントントンと階段を下り、テニスコートでゴロンゴロンしてから、ちょうどみんなのいるお庭へとやって来た。
 みぁ~くんは、並んだ妹たちのお尻を眺めながら、「ちょっとどいて、何見てんの」と窓からあのお部屋に入っていった。
 さぁ~大変。私や妹たちはみぁ~くんと仲良しだけど、なんとゆうれい犬さんはネコが怖いらしく、「ギャー」と叫びながら天井まで飛び上がり、頭をぶつけてパッと消えてしまった。

 この一瞬の出来事に、妹たちは顔を見合わせて「ネコが、ダメだったんだねぇー」と少しガッカリしている。男らしくてカッコイイーって思っていただけに、ショックは大きいようだ。
 みぁ~くんは、自分のせいだと少しも思わず、「今、なんか飛んで天井にぶつかんなかった?」と首をひねっている。

 この出来事があったせいか、ゆうれい犬さんは、約束したその日の午後1時には顔を出さず、次の日も、その次の日も現れることはなかった。
 どうしちゃったんだろう? 男のくせに約束を守れないなんて……。シーズー犬とおばあちゃんを逢わせる作戦は1週間後って言ってたのに、お母ちゃんと打ち合わせしなくていいのかなぁー。

 そして、とうとうその日がきてしまいました。

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迷子の小次郎

「でも、ポーちゃんと私たちはペットショップでの出逢いだったけど、他の人たちもいろんな出逢いと想い出があるんだろうね」
「そうだね、そしてその出逢いが、わんこも人間も幸せへと導いていくんだと思う」
「ポーちゃんとの出逢いは、お父ちゃんもお母ちゃんも、おばあちゃんまでも変えてしまったからね。だって、ポーちゃんが私たちの所に来てくれたから、このホテルをオープン出来たんだもの。前の仕事の時に、ポーちゃんと一緒に旅行に行ってなければ、ペット連れ専用ホテルをやろうなんて考えなかったかもしれない。あの時、ペンションの埃だらけのお部屋で嫌な応対をされて、ホントお父ちゃんとお母ちゃんは落ち込んでしまったんだから」
「そうだね、あの時お母ちゃんは全然ご飯食べないで、ワインをいっぱい飲んでたもん。よほど気分悪かったんだね」
「そりゃーそうよ、廊下は歩かせるな! ワンワン吠えさせるな! レストランには連れて行くな! でしょ!! レストランだけは、ポーちゃん独りでお部屋に置いて行けないからって、頭を下げて頼み込んだけど……。予約の電話では、すごーく優しく『いいですよ』って言ってたんだから。それが当日になって、わんこ連れでないお客様がいらっしゃるのでなんて言われても、困っちゃうよまったく!!」
 その日を思い出して、また怒っているお母ちゃん。
「でも、そのことがあったから、お父ちゃんと相談してこのホテルをオープンしたんでしょ? じゃーそのペンションさんに、感謝すべきじゃないの?」
「それもそうだね! 私たちと同じような人が大勢いるって気が付かせてくれたのは、あのペンションさんだものね。ポーちゃんの言うとおり、感謝しなくちゃ。おかげで今は、いつの間にか増えてしまった子供たちに囲まれ、わんこ好きのお客様ともお友達になれたし、お父ちゃんもお母ちゃんもおばあちゃんもみんな幸せだから、ポーちゃんにあらためてお礼言わなきゃね。ポーちゃんうちの子になってくれて、本当にありがとう」

「やだーお母ちゃん、今さらそんなこと言って、恥ずかしいよ。私あの時、ペットショップでお母ちゃんに、お願いだから私を連れてって!! って一生懸命テレパシーを送り続けていたの」
「へえー、そうだったんだ。だからお母ちゃんポーちゃんと目が合って、あの場所から離れられなくなっちゃったんだね」
「あの時、私の隣のケージにいたヨーキーちゃんは、お母ちゃんと、他に三人の飼い主候補者がいたんだよ」
「あー、私が最初に飼う予定だった子ね」
「うん。お母ちゃんはテレパシーの力で私を選んでくれたけど、あの子もすぐ別の候補者の人が連れて行ったんだ。素敵なご夫婦でとっても優しそうだったよ。風の便りで聞いたけど、今も幸せに暮らしてるって」
「あー良かった。お母ちゃんあの子のこと、すごく気にしてたんだ。ポーちゃんと出逢う前は、そのヨーキーちゃんを家族にしようと思っていたからね。でも良かった、幸せそうで。ところでポーちゃん、お母ちゃん前から気になっていたんだけど、人間とかわんことかに、神様って本当にいるのかな?」
「神様はたくさんいるよ。人間のための神様、木とか水とか山の神様、そして、私たちわんこにとって大切な動物の神様。その他にもいっぱいいるけどね。人間の神様は、人間の心と心が集まって作られたもの。動物の神様は、動物の心と心が集まって作られたものなんだよ。時々この神様が全員集まって会議をしているらしいんだけど、内容はよくわからない」

「ポーちゃんは、その神様たちに会ったことはあるの?」
「うん、あるよ。いつも神様は心の目で見ていてくれて、何かあった時に頑張れって力づけてくれるの。私が前の飼い主さんからペットショップに返されてお母ちゃんに逢うまでの独りぽっちだった時、傍でずーっと慰めてくれていたの。今でも私の所に遊びに来てくれるけど、見えないのはお母ちゃんが気が付いていないだけなんだ」
「お母ちゃんには姿が見えないのかぁー、残念だなぁー。ポーちゃん、今度神様に会ったら、『いつもお世話になっています』って伝えてね」
「うん、わかった。今は人間の神様も動物の神様も忙しいから、いつ来てくれるかわからないけど、伝えておくね」
「ありがとう。でもね、お母ちゃんいつも思うんだけど、この世に神様がいるんだったら、捨てネコや捨てイヌをしないように人間にアドバイス出来ないのかなぁー。神様なら出来るような気がするんだけど」
「それは、動物の神様も人間の神様に抗議しているらしいんだけど、動物と違って人間は、神様の言うことをなかなか聞いてくれないから、大変みたいよ」
「人間も自分のことばかり大切にしないで、他の生き物に愛情を注いだり、木も風もみんな一緒に生きていることに気が付けば、もっと幸せになれるのにね」
「お母ちゃん、よく、動物が好きな人に悪い人はいないって言うでしょ、あれは本当のことなのよ。そばにわんこやにゃんこがいると、神様たちからいろんなアドバイスが受けられて、知らないうちに幸せになっちゃうんだよ」
「すごいねー。そういえば、ポーちゃんやチコちゃんが私たちの家族になるたびに、幸せ度が増している気がする。この子たちのために仕事もガンバロウ! って力も湧いてくるし、人間関係も良い人たちばかりに恵まれて、みぃ~んなポーちゃんたちのおかげだね」
「私たちだって、お父ちゃん、お母ちゃん、おばあちゃんと一緒に暮らせて、すごく幸せなんだから。みぁ~くんだって10歳過ぎて東京から来たけれど、おばあちゃんと同じお部屋で過ごしてお庭で一緒に散歩して、とても幸せって言ってたよ。遊び盛りの妹たちと何も出来ない私だけど、これからもよろしくお願いします」
「こちらこそよろしく」
 お母ちゃんと初めてこんなお話をしたけれど、他のお友達も親子でこんな会話をしているのでしょうか?

 お部屋に戻ると、妹のコロちゃんやロクちゃんたちが背中の毛を立てながら、「クンクン、クンクン(なんだか変だ! 怪しい匂いがする!)」と、お母ちゃんと私の身体に鼻をピクピクしてくる。
 怖がりのクロちゃんは、ブルブル震えながら、「ウゥ~ウゥ~、ワン(あまり近づくな!!)」と唸っている。
 私が、「コラッ!」と怒ると、すごすごとベッドの下に潜り込み、目だけで私とお母ちゃんの姿を追う。仕方ないな、誰だってゆうれい犬さんの匂いは嗅いだことないと思うから。
 それにしても、ゆうれい犬さんが言っていた、さくらの里のお屋敷のおばあちゃんに、見知らぬわんこを逢わせて飼い主さんになってもらう計画なんて、上手くいくのだろうか?

 次の日の朝。ラウンジで朝食後のコーヒーを飲みながら、何組かのお客様がお喋りをしていた。
「すみません、うちの子、夜中にワンワン吠えてうるさかったでしょう」
「楽しかったですネー、またご一緒に遊んでくださいますか?」
 などと、すっかりお客様同士で仲良しさんになったようだ。
 フロントでは、係の利光兄ちゃんと鈴木先生(元幼稚園の先生なので、お母ちゃんは先生、先生って言うんです)が、
「ありがとうございました、ミルクちゃんまたねー。ラブちゃんバイバイ、おばちゃんのこと忘れないでねー」
 と、お見送りをしている。
 お客様の記念写真を撮っていた、一番若手(17歳です)の剛兄ちゃんが、
「チェックアウトはあとひと組ですね」
 と時間を見ている。時計の針は、もうすぐ11時になろうとしている。
 お掃除部隊の隊長ツッチーも、
「まだお部屋に入っちゃダメですか?」
 と確認に来ていた。

「お部屋に電話してみましょうか?」
 と、利光兄ちゃんが受話器を持った時、
「すみませぇーん、うちの小次郎こちらに来ませんでしょうか? 食事のあとお部屋にいたはずなのですが、いつの間にか姿が見えなくなっちゃったんです」
 と、チェックアウトが遅れていたお客様で、パグの小次郎ちゃんのママが、青い顔で飛んで来た。
「小次郎くんが? 行方不明になっちゃったんですか? それはご心配ですね、みんなで探しますよ。お母さん大丈夫です、敷地内はすべてフェンスで囲ってありますので、外には行けません。すぐ見つかりますので安心してください」
 と、支配人のナガシャワシャン(長澤さん)は、剛兄ちゃんと利光兄ちゃん、そして他のスタッフにも声をかけて、小次郎ちゃんを探し始めた。

 お母ちゃんは、剛兄ちゃんからの報せを聞いて、飲みかけのコーヒーをガブガブガブと飲み干すと、
「ポーちゃん、子供たちみんなで手分けして捜して」
 と言いながら、客室の方へと向かって行った。私は小次郎ちゃんの特徴を妹たちに話し、
「ねっ、わかった、相手は小さい子だから脅しちゃダメだよ。見つけたら『ワン、ワン』と2回鳴いて、みんなに報せるのよ!!」
 と指示をして、お母ちゃんのあとを追いかけて行った。

 しばらくして、「ギャン、ギャン、ギャン、ギャン」と、妹たちのけたたましい鳴き声が、館内に響いた。
「まったく、あれほど説明したのにわかんないんだから、2回吠えればいいっつてんのに!!」
 そうブツブツブツ言いながら鳴き声の方へ走って行くと……、あの、ゆうれい犬さんの気配がしてきた。
「まさかっ? 妹たちは小次郎ちゃんじゃなくて、ゆうれい犬さんを見つけたの……?」

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ゆうれい犬さんの頼みごと

「それは、僕を育ててくれたご主人様の奥さん。僕が死んで3年後に、ご主人様も病気で亡くなってしまってたから、奥さんは今、この近くの広いお屋敷に、独りぽっちで住んでいるんだよ」
「独りで?」
「そう独りで。もう85歳になるんだけど、独りでご飯を食べて、独りでテレビを見ているから、何をしても溜息ばかり。寂しさのあまり病気になってしまうんじゃないかと、ゆうれいになった僕もご主人様も心配なんだ」
「話し相手もいなければ、寂しい毎日だろうね。あ、わかった、うちのお母ちゃんはお喋りだから、そのおばあちゃんの話し相手になってってこと?」
「うん、それももちろんあるけど、もっと寂しくない方法」
「寂しくない方法って?」
「わんこと一緒に暮らすってこと。もちろん、生きているわんこだけどね」
 私の頭の中に、そのおばあちゃんがわんこと一緒に、楽しくご飯を食べている姿が浮かんできた。
「それはいい考えかもしれない。ペットレスになった人を治すには、また違うわんちゃんを飼って愛情を注ぐと良いって言うものね。うぅ~んいいかも~」
 私は大賛成でした。

「フンフン、フンフン、フンフンフン」
 お母ちゃんが、とぎれとぎれの会話にあいづちを打っている。話の内容がわかったのだろうか?
「お母ちゃんがなんだってぇー、お喋りだってー。もう、ポーちゃんもゆうれい犬さんも失礼なこと言わないで!!」
 と、むくれている。
「あー、やっぱりちゃんとわかっていなかったんですね」
 と、ゆうれい犬さん。
 もう一度お母ちゃんに説明し直すと、
「よし! その話乗った。お母ちゃんの出来ることならなんだってするから、言ってちょうだい!! で、どんなわんこを選べばいいの?」
「6歳になるシーズー犬で男の子。お散歩も楽だし、もう6歳だからやんちゃ盛りも過ぎて落ち着いている、大人しくて甘えん坊さんらしいんだ」
「えっ、もうその子に決まっているんだ。誰が決めたの?」
「神様が決めたのさ。じつは今日から1週間後に、おばあちゃんとその子が巡り逢う時が必ずやってくるんだ。どんな形で出逢うのか僕はまだ聞いていないからわからないけど、その時、ポーちゃんのお母ちゃんの力が必要なんだ」
「こんなお母ちゃんだけど、わんこのためだったら一生懸命お手伝いすると思うよ。それに、お母ちゃんはお年寄りが好きだから、きっとうまくいくと思うよ」
「ありがとうポーちゃん。ポーちゃんとポーちゃんのお母ちゃんが協力してくれるなら、ゆうれいの僕もご主人様も、一緒に出来る限りのことをするよ」
「まかしといて! 身体はちっちゃいけど、やることはでっかいんだから」
「あっははははは……」
 私とゆうれい犬さんは、やっと明るく笑うことができた。

 ふと見ると、つい今まで横で「フンフン、フン、フン」とあいづちを打っていたはずのお母ちゃんが、いつの間にか「フニャ、フニャ、フニャ」と一人でねぶた祭りをしている。
 そういえばさっき、お話の途中なのに「あー、太陽のいい匂いが私を誘っているー」と、重ねてあった座布団にスキスキしてたっけ。せっかくおてんとう様に干しといたのに……よだれまで垂らしちゃって……。ツッチー(ホテルのお掃除部隊の隊長さんです)に叱られるから。
「お母ちゃん……お母ちゃんってば!!」
 お腹の上に乗ってドンドンやっても、お顔をペロペロ攻撃しても、お母ちゃんの元祖ねぶた祭りには勝てない。しようがないので、詳しくはまたあとで打ち合わせをすることにして、ゆうれい犬さんも私も、しばらく一緒にねぶた祭りに参加することにした。

 ZZZ・ZZZ・ZZZ……。
「ファックション、ハァークション、ファックション」
 しばらくして、お母ちゃんの激しいクシャミと、周りの空気を全部吸い取ってしまうような大あくびと共に、ねぶた祭りは終わりを告げた。
 ゆうれい犬さんとは、明日の昼1時に、またこのお部屋で逢う約束をして、今日はとりあえず解散することになった。
 お母ちゃんと私はドアから、ゆうれい犬さんは窓からスゥ~~ッと消える。

 二人でお部屋に戻りながら、
「ねぇーお母ちゃん、こんなに遅くなっちゃって、お父ちゃんになんて説明しようか?」
「ねぶた祭りをしていたこと?」
「そうじゃなくて、あのゆうれい犬さんのこと。そのまま話しても信じてくれないと思うし、二人とも頭がおかしいんじゃないかって言われちゃうよ。今だって、お母ちゃんはよく一人でブツブツお話してるって思われているんだから。私の声は、お母ちゃん以外には誰も聞こえないんだよ」
「そんなこと言ったって、しようがないでしょ。ポーちゃんとお話してるって説明したって、それこそ信じてくれないんだから。どうせね、お母ちゃんは変わっている人で通っているから気にしないけどね、あはははは……。でもぉー、ポーちゃんとお母ちゃんはいつの間にかお話が出来るようになったけど、他にもわんことお話出来る人っているのかなぁー」
「えっ、お母ちゃん知らなかったの? お客様の中でも、私たちと同じように会話している人たちは何人かいるよ」
「うそっ、誰? お母ちゃんが知ってる人? よくお泊りに来てくれる人?」
「さて、誰でしょう、当ててみてください。ヒントその1、よくお泊りに来るお酒の好きな人で、お父ちゃんと一緒に夜中まで飲む人です」
「えー、お父ちゃんと一緒によく飲む人ねぇ~。あっ、わかった。唄の上手な、フィーバーちゃんとトゥインちゃんのパパ」
「ブッブー。ヒントその2、わんこは小型犬、そして3人います。もうそろそろおわかりですね」
「わんこ3人、わんこ3人ねー……。そうだ、パグのうめさん、こなつちゃん、よねさんのパパ!! 当たりでしょ!」
「残念、ハズレです。では最後のヒント、これでわかんなかったら、もう、おせーない!! いいですか? その人たちがみえるたび、お母ちゃんはお客様なのにいろいろと頼りにして、助かってます。さぁー誰でしょう」
「はい、わかりました。これは絶対に正解です。その方の名は、シーズーのロンちゃん、アトちゃん、サブちゃんのパパでぇ~す」
 と、得意顔になるお母ちゃん。ニタッと笑う私。

「ブッブー、残念でした。答えはロンちゃん、アトちゃん、サブちゃんのパパではなく、ママでした」
「ポーちゃんずるぅ~~い。どっちだっていいじゃない、親なんだから」
「でも、お話が出来るのはママだけだもの」
「そっかぁ。パパもすごく子供たちを可愛がっているのにね」
「これは愛情の問題じゃなくて、人間とわんこのテレパシーが、どれだけ通じるかなのよ」
「なるほどねぇ。じゃあ、わんこ同士の場合も、テレパシーでお話をしているの?」
「そう。でも、わんこ同士でもお話が出来ない子や、わんこにも人間にも、全然テレパシーが通じない子もいるしね。でも、じつはそういう子は他の力が強いの。例えば人間に仕事のアドバイスをしたり、心の優しさを取り戻してくれたり、夫婦の仲がもっと良くなるように取り持つ子だったり。そういう力のある子は、人間に大きな勇気を与えることだって出来るんだよ」
「すごいねー、わんこって。一緒に生活しているとなんか違うと思ってたけど、尊敬しちゃうなぁー」
「尊敬なんてちょっと照れちゃうけど、例えばお客様の中で、この子は他のわんこが苦手なのって言われる子がいるでしょ、そういう子は、じつはわんこ同士でのお話が出来ない子なの。でもその代わり、人間のご主人様に与える力は、すごい物を持っているんだから。仕事運も金運も家庭運もみんな良くしちゃう。いいよね、そういう力を持ってるわんこって。うらやましいなぁー」
「うらやましいなぁーって、ポーちゃんもそういう力を持ってんでしょ?」
「ううん、持ってない」
 あっけらかんと言う私。
「ゲェッ……」
 少しがっかりした、お母ちゃんであった。

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サンロードポチ母

Author:サンロードポチ母
伊豆高原、大室山の近くプチホテルサンロードは、1100坪の敷地を全て愛犬のために開放したペット同伴のリゾートホテルです。
サンロードポチ母のわんこ愛情物語です。

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