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ジョンの秘密

「ジョン元気だったか? よしよし、いい子だ。ジョンお土産持ってきたぞ」
 お馴染みさんで、いつもお泊まりに来てくれる、ゴールデンのラッキーちゃんのパパが、本皮で立派な首輪とリードをジョンに付けている。

 ホテルに来るようになって約半年、ジョンはすっかりお客様の人気者になっていた。おしりの怪我も良くなり、ボロボロだった毛並みもつやつやで、身体もがっちりしてきて、どこから見ても立派なミックス犬に生まれ変わっていた。
 ただ長い間、放浪生活をしていたせいか、繋がれることが大嫌い! 繋ぐと1日中吠えて、近所の方やお客様にも迷惑をかけてしまう。
 お母ちゃんも、「保健所に連れて行かれるのが心配だから」と何回か繋いでみたけど、結局あきらめてしまった。

 ラッキーちゃんのパパは、新しく付けたリードを持ち「ちょっと、お散歩に行ってきます」と、まるで自分ちのわんこのように連れて行った。
 ラッキーちゃんのパパの足元で、嬉しそうにピョンピョン飛び回り、ちぎれるほどにしっぽを振るジョン……すごく嬉しそうだ。

 1時間くらいたって、「ただいまー」と息を切らして、ラッキーちゃんのパパとジョン君が帰ってきた。
「おかえんなさーい」庭で遊んでいた他のお客様も、にこやかに2人の帰りを迎えてくれた。

「ワンワン、ワンワン、クゥーンワン(ジョン君おかえんなさい。お散歩どうだった? 楽しかった?)」
「ハァハァハァハ、すごく楽しかったよ。久しぶりに大室山や桜の里に行って思いっきり走って、やっぱりあの場所は最高だよ。ポーちゃんもときどき行くよね」
「うん。私も、あの場所が一番好きなんだ。思いっきり駆けっこしても車は来ないし、お父ちゃんもお母ちゃんも気に入っているみたい。ただジョン君みたく、走っては行かないけどね」
「じぁー車で行くの?」
「うん。車のときもあるけど、お母ちゃんに抱っこのときもあるよ」
「えー、抱っこじゃお散歩にならないじゃん。ポーちゃん甘えんぼさんだからな」
「ちょっとだけね」
 ジョン君は、おいしそうに水を飲みながら、他のわんこに出会ったこととか、ラッキーちゃんのパパとボール遊びしたとか、嬉しそうに話をしている。

 体育系の、体力がありそうなラッキーちゃんのパパだけど、「ふぅー疲れた。一緒に大室山まで走って行ったけど、けっこうあの坂道はきついねー」と言いながら汗をぬぐい、
「ところでポーちゃんのママ。この子は近所でもごはんを貰って可愛いがられているみたいですよ。たまたま道で会ったおばあさんとおじいさんなんですが、不思議そうにこちらを見ているので何かな? と思っていたら、声をかけてきましてね。いろいろお話しを聞きましたら、この子の面倒をみているそうなんですよ。最初は犬違いかな? と思ったのですが、この子がしっぽを振って行くものですから、間違いないと思いましてね。いやー、驚きましたよ」
 と言いながら、ペットボトルの水をゴクゴクゴクと飲み干す。

 ジョン君の頭を撫でながら「名前は太郎。なぁー、お前は太郎だったんだよなぁー。半年くらい前に迷い込んで来て、可哀想だからとごはんをあげているうちに惰が移ってしまって、飼うことにしたそうなんですよ。ただ、繋がれるとワンワン、ワンワン(いやだよー自由にしてよー)と泣くから放しているらしいですが、夕方になるとトコトコ帰って来て、前に亡くなったわんこの家で寝泊まりしているそうなんですよ。このまま引き渡した方がいいのかな? とも思ったんですが、勝手に渡してポーちゃんのママにがっかりされても嫌だから、とりあえずここのホテルに連絡してくださいって言っておきましたよ」
 お母ちゃんは、「そうですか。飼い主さんが他にもいたんだ。名前は太郎か、良かったね」と、嬉しいような悲しいような表情でジョン君を見ている。

 私もラッキーちゃんのパパの話に驚いて、「ジョン君、2軒もお家行ったり来たりしてんの?」と聞くと、ジョン君は得意そうな顔をして「違うよ、3軒だよ」と答えた。
「さ、3軒!」

「そぉ、3軒。1軒はラッキーちゃんのパパがさっき話していた、このすぐ近くに住んでいる、ふたり暮らしのおじいちゃんとおばあちゃんのとこ。大きな家で、広い芝生の庭があって、僕が寝る家もあるんだ。前のわんこのお下がりみたいだけどフカフカの毛布を敷いてくれて、とっても寝心地いいんだ」
「へえー、いいとこなんだね」
「おじいちゃんもおばあちゃんも、とっても優しくしてくれるから、一生懸命甘えて恩返ししているんだ」
「優しい人で良かったね。それで、そのおじいちゃんとおばあちゃんが太郎君って名前を付けてくれたんだね」
「うん、前に飼っていたわんこの名前なんだって。12年くらい一緒に暮らして天国に行ったそうだけど、僕と同じ野良犬だったから、実際の歳はわかんないみたい。おじいちゃんとおばあちゃんは、あのときの悲しみを二度と味わいたくないから、もう犬は飼わないって決めたらしいんだけどね。僕がトコトコ行っちゃったから……」

「よっぽど可愛がっていたんだね。先代の太郎君を」
「そうだね。3年も前に死んじゃったのに、部屋にはね、先代太郎君が使っていた食器とかおもちゃとかが大切にしまってあって、写真もいっぱい貼ってあるんだ。僕と先代の太郎君が似ているせいか、今じゃ太郎、太郎って……。家の中までおいで、おいでって言ってくれるんだ。ただ、僕は今までが外の暮らしだったから、おしっこのときはおじいちゃんをワンワンワン、フウーン、キャンキャン(早く外に出してーもれちゃうよー)って起こさなければならなくて、大変なんだよ。先代の太郎君はおしっこシートでやってたようなんだけど、僕は苦手なんだ」
「ふぅーん。慣れないとだめなのかなー。私は、お庭でもおしっこシートでもどっちでも大丈夫だけど、ただうんちのときは、あまり見られたくないね」
「あははは……ポーちゃんでも恥ずかしいことあるんだね」
「あははは……って何よ。真剣にお話を開いてあげてるのに!」

「ごめんごめん。でも、やっぱり家の中はいいよ。家の中はあったかいし、いつも頭を撫でてくれる、おじいちゃんとおばあちゃんがいるんだもん。僕たちわんこは、いつでも人間が側にいてくれるだけいい、それだけで、幸せなんだよなー」
「私も、お母ちゃんがいないと全然だめなの。ごはんもおやつも食べたくなくなっちゃうし、ゆっくりお昼寝も出来ないんだ。ときどきおばあちゃんにお子守りしてもらうけど、私はお母ちゃんっ子だから、いないとすぐ、いじけちゃうんだ」
「ポーちゃんやポーちゃんの妹たちは、朝から晩まで1日中家族と一緒なんだから、恵まれているよ……」

「ところでジョン太郎君、もう1軒のお家はどこなの?」
「ジョン太郎はないだろう」
「だって、どう呼んだらいいかわかんないもの」
「ポーちゃんと話しているときには、ジョンでいいよ」

「じゃージョン君。もうひとつの名前を付けてくれた人はどんな人?」
「えっへん。お答え致します。そのお方は、某会社の元社長さん。で、今は会長さん」
「あっわかった! 会長さんて、ゴミがどうのこうのとか、わんこがうるさいから静にさせろって文句ばっかり言ってくる、あの嫌なおじちゃんだ。私、嫌いだなぁー」
「違います。それは町内会長さん。僕が言っているのは、会社の偉い会長さん。会社の名前を言えば人間界ではみんな知っている、すごい人なんだって」
「あっそうなの……そうだよね。あの怖いおじちゃんがジョン君の面倒見てくれるわけないものね。わんこ嫌いだから。でも、またまたリッチなお家っぽいね」

「そう、実はすごい豪邸なんだ。もともと犬は飼ったことなかったらしいんだけど、僕が勝手口のゴミ箱をあさっていたら、夕食の残りを「さぁーお食べ」と出してくれたんだ。ステーキにお刺し身、伊勢海老や焼き魚と、豪華な食事でびっくりしちゃったよ。ポーちゃんのママはカリカリとか缶詰で、太郎君のおじいちゃんとおばあちゃんは煮物とかごはんにみそ汁。それはそれで美味しいけど、ステーキなんて食べたことなかったから、あわてて食べて喉に詰まらせちゃったよ」
「ステーキねー、私はあんまり好きじゃないけど、妹たちは大好きだものね。ときどきお客様の残り物をレストランのお兄ちゃんが持って来ると、妹たちはお座りしていい子で待っているものね。あの匂いがたまんないみたい。クンクン、クンクン(おいしそう、おいしそう)ってね。ちなみに私は納豆ごはんが大好きだけど、お母ちゃんが食べた後、お口の周りが大変なことになるーって言ってくれないんだ。それと、もっと好きなのが自動販売機で売っている缶コーヒー。お母ちゃんがいつも飲んでるから、私も好きになっちゃったの。お母ちゃんが100円玉をチャリンチャリンて持ったら、アゥーワンワンワンワンワンワン(やったー、コーヒーコーヒーコーヒー)って、つい騒いじゃう」

 ※本当は人間が食べる物や、飲む物を与えてはいけないのです……母より

「変わった物が好きなんだね、ポーちゃんは……。そうだ! コーヒーって言えば、そこの家では僕、ブレンドって呼ばれているんだ」
「ブレンド? ブレンドって、どんな意味があるのかなぁー?」
「ブレンドって、いろいろなコーヒー豆を混ぜ合わせた物とかを言ったりするんだよ。このごろ、僕たちみたいな雑種はミックス犬って言うだろう。それと同じ感じかな」
「よくわかんないけど、カッコイーね」
「僕も雑種って言われるよりブレンドの方が、なんとなく格が上がったようで好きなんだ」

「豪邸のおじちゃんもいい人みたいで、ジョン・ブレンド・太郎君も幸せだね」
「ああ、幸せだよ。半年前の僕を考えたら最高に幸せだよ。まるで夢を見ているみたいだ。それにしてもジョン・ブレンド・太郎か、なんか洋犬みたいな名前で照れちゃうな」
「私もお母ちゃんたちに助けて貰わなかったら、もう、この世にいなかったと思うけど、ジョン・ブレンド・太郎君も、いろんな人にお世話になって生きているんだね」
「ああ……そうだね」

 昔のことを思い出しているのか、今の幸せを噛み締めているのか、ジョン・ブレンド・太郎君の姿が、大きくも小さくも見えた。

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Author:サンロードポチ母
伊豆高原、大室山の近くプチホテルサンロードは、1100坪の敷地を全て愛犬のために開放したペット同伴のリゾートホテルです。
サンロードポチ母のわんこ愛情物語です。

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